アンティークコインのコレクターや投資家にとって最も恐ろしいのが、そうと知らずに贋作や価値の低いコインを高額で買ってしまうこと。最悪の事態を避けるためにも、積極的に鑑定機関を頼りましょう。
この記事では、アンティークコインの鑑定機関や鑑定済みコインを買うことのメリットをお伝えします。
アンティークコインの鑑定機関
アンティークコインの価値を決める上で外せないのが「鑑定」、すなわちグレーディングです。アンティークコインを調べていると、「NGC」や「PCGS」といった英語に出くわすのですが、これらは世界で最も有名なコインの鑑定機関のことです。
アンティークコインはNGCやPCGSの鑑定に基づいて 取引されることが多いです。これらの第三者機関の鑑定書がついているコインは品質が保証されている、ということですね。
NGCとは?
NGCはNumismatic Guaranty Corporationの略で、アメリカ・フロリダ州に拠点を置いています。アメリカのスミソニアン博物館や上海のミントミュージアムなど、世界有数の博物館に所蔵されているコインの鑑定実績もある鑑定機関です。
PCGSとは?
PCGSはProfessional Coin Grading Serviceの略で、アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置いています。歴史はNGCよりわずかに古く、コインの評価はNGCより辛口として知られています。
NGCとPCGSはどちらを選ぶべきか?
PCGSの方がNGCより鑑定が厳しいことが知られており、鑑定基準の厳しさでは世界ナンバーワンと言われています。PCGSとNGCが同じグレードをつけていた場合でも、PCGSの鑑定結果の方が信頼性が高く、価格も高くなるのです。
PCGSに比べるとNGCの鑑定の方が優しいので、コインのディーラーなどはNGC鑑定のコインを扱いたがる傾向がありました。割安感を持たせてグレードの高いコインを販売できるからです。
しかしPCGSの方が厳しく鑑定されるために、同じグレードであればNGCよりPCGSの方が高く売れます。そのため、近年ではPCGS鑑定コインの方が人気があります。
鑑定済みアンティークコインの購入がおすすめ
アンティークコインの価値を個人で見極めるのは至難の業です。年代から大体推測できるのでは?と感じる人もいるかもしれませんが、コインの鑑定はもっと複雑です。
ほんのわずかなキズが鑑定結果に大きな影響を与え、価格が下がってしまうといったケースもあるのです。また、素人には見分けのつかない贋作も存在します。
専門家が鑑定したアンティークコインを購入するのが、最も安全でおすすめします。次のようなメリットもあります。
- 偽物の可能性が格段に下がる
- グレードつきは価格が変動しにくい
- 再鑑定するとグレードが上がることも
偽物の可能性が格段に下がる
PCGSやNGCの鑑定結果がついたアンティークコインであれば、偽物ということはほとんどありません。鑑定誤りはゼロといっても過言ではない水準で、しっかりと鑑定して貰えます。
逆に言えば、鑑定結果がついていないコインは贋作や価格よりも格段に価値の低いコインである可能性が拭いきれません。訳あり商品の可能性があるので、特別な理由が無ければ手を出さない方が無難です。
グレードつきは価格が変動しにくい
一般的に、貴金属でできているコインの価格は、金の相場などに連動して値動きします。しかし、アンティークコインは美術品としての側面があるため、この性質に当てはまりません。
特に鑑定結果がついたコインは、金相場が変動しても影響をほとんど受けません。鑑定されたアンティークコインそのものの価値で取引されるため、安定した価格を保てるのです。
再鑑定するとグレードが上がることも
既に鑑定したコインであっても、前回の鑑定から10年以上経っていれば、グレードが変わっていることがあります。鑑定会社の基準が変わったり、市場の動向が変わったりして、グレードが上がることがあるのです。
再鑑定でグレードが上がる可能性がある一方、下がってしまう可能性もあります。これでは意味がないので、再鑑定を依頼するときに「グレードアップしない場合、グレードを据え置く」といった条件をつけましょう。
鑑定済みコインはケースに入れて楽しもう
PCGS、NGCでアンティークコインを鑑定してもらうと、コインはプラスチックケースに入れられます。そのケースから一度も出さず、封じた状態で保管している限り、コインの鑑定結果は保証されます。
一度でもケースから取り出してしまうと、他者から鑑定済みコインを他のコインと入れ替えたのではないか、という疑いが出てしまいます。入れ替えていないことを証明するには再鑑定して貰うしかないので、ケースからは安易に出さない方が良いでしょう。
しかし、せっかく手に入れたコインをケース越しではなく直に見たかったり、手のひらに載せてみたかったりしますよね。ケースに入っていないコインを「裸コイン」と呼び、この状態で収集している人もいます。
ただし、裸コインは本当の価値が分からないという大きなデメリットがあります。裸コインとして楽しむため、愛着あるコインを長い間鑑定に出さなかった人の悲劇をご紹介します。
鑑定済みでないコインを買った人の悲劇
あるコレクターが、集めたアンティークコインの中から最も価値が高いと思える裸コインを鑑定に出しました。10年以上も保有したコインでしたが、残念ながら鑑定結果は「贋作」でした。
鑑定結果が信じられないコレクターは他の鑑定機関にも調査を依頼するのですが、どこで鑑定しても結果は「贋作」だったのです。お気に入りで長く持っていたアンティークコインが偽物だったら、がっかりどころでは済まないですよね。
このコレクターは鑑定されていないコインを買ったため、贋作に引っかかってしまいました。よくできた贋作は販売店自身も騙されていることがあり、販売店も悪気なくコレクターに売ってしまったと考えられます。
事例から学ぶ鑑定の大切さ
販売店すら見抜けない贋作を、個人が見抜くのはほとんど不可能でしょう。裸コインを購入するリスクは、上記の事例からお分かりいただけたはずです。
せっかく高いお金を出して買うのですから、失敗したくないですよね。アンティークコインは鑑定済みのものを買うようにしましょう。
まとめ
アンティークコインの収集家や投資家にとって最も重要なのが、コインの鑑定と言っても過言ではありません。贋作やグレードの低いコインをそうと知らずに掴んでしまっては大損です。
この記事では、鑑定済みコインを買う大切さを解説してきました。安心して長く保有できるアンティークコインに出会うためにも、鑑定結果は重要なのです。